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大家んち
大家んち


加害者を見つめるということ
 引越して一週間が過ぎ、ようやく落ち着いてきた。原因不明の微熱が引越前から1か月くらい続いていて、万全ではなく時々寝込んではいるのだけれど。それも引越の落ち着きと共に、徐々に良くなりつつある。

 今日は、大学のゼミの先生から推薦メールが来ていた映画を観に行ってきた。
 「スティーヴィー」というノンフィクション映画。 父親は誰か聞かされず、母親からは虐待を受けて育ったスティーヴィー。監督のスティーブは、カウンセラーをしている妻の勧めで、スティーヴィーが11歳の時にビッグブラザー(兄役制度)になることにした。スティーヴィーはその時、すでに親から捨てられ、祖母に預けられたが、祖母の手にも負えず、施設暮らしをしていた。ところがその後監督は、監督修行のためにスティーヴィーの元を去る。その時彼は、ホッとした気持ちがある一方で、このままにしてはいけない、連絡を取り続けなければならないと考えていた。それから10年後、監督はスティーヴィーの映画を撮ろうと戻って来る。救いたいと言いながら、10年間放っておいた罪悪感もあったようだ。久しぶりに再会したスティーヴィーは犯罪を繰り返していて、撮影の最中にも8歳のいとこへのレイプ事件を起こしてしまう。
 彼の日常が、そこには描かれていた。スティーヴィーはその場その場を誤魔化して過ごしてしまう部分があると感じた。それは、受け入れるには辛過ぎる現実を誤魔化しながら、自分の感情を誤魔化しながら、生きてきた彼の生きる術だったのだろうが、成長した今、それが彼の生活に支障を与えているように見える。レイプ加害者であることは多分事実(本人は認めていない)で、その行為を許すことはできない。けれど、彼を加害者として排除し、重い罰を課すだけでは解決しないことを、この映画は映し出してくれていた。加害者と被害者の複雑さを描いている部分は、「デッドマン・ウォーキング」に通じるものを感じた。スティーヴィーは、加害者でもあり被害者でもある。それらは、それぞれに癒されたり償ったりする必要があり、どちらかをおろそかにしては犯罪を防ぐことは難しい。ただ、加害者の被害者性を癒すのは、その加害の被害者から遠く離れた人である方が望ましい。ところが虐待は、加害を知っているのが被害者だけという場合も多く、近くにいるのも家族である被害者であり、被害者が癒し支える立場になってしまうことも多い気がする。
 虐待加害者である母親との関係も、うそ臭い部分、本音の部分、複雑な部分、ひねくれた部分、それらが映像なだけにリアルに見えた。スティーヴィーは映画の前半で、母親をひどくののしる。でも、それだけが彼の本音だと取ってはいけないのだろう。虐待被害者は、加害者であり親でもある存在に対し、複雑な感情を抱いている。憎しみだけでもなく、愛情だけでもなく、恨みの言葉を吐きながらも愛してほしいと訴えている気がする。どうでもいい人なら、何十年も恨みだけに囚われないだろうから。現に後半では、彼は母親と協会に行ったり、刑務所でハグをしたり、母親を受け入れようとする場面もある。でも、そこを描き伝えるのは本当に難しい。一緒に観た人は、「なぜ母親が虐待をしながらそれを曖昧にして謝らず、そのくせスティーヴィーに今更母親面ができるのか、スティーヴィーがそれを受け入れて歩み寄ろうとするのかが分からない」と言っていた。あたしもうまく説明ができなかった。「親だから」「子どもだから」そう言ってしまうのは簡単なのだが、そうは言いたくない。じゃあなぜ? と言われると、言葉にできない。言葉で説明するには、一冊の本ができてしまう。でも、この映画でさえ、その感想を言った人には伝えることができなかった。やはり、その関係性や感情を表現し伝えるのは難しいということを思い知った。

 映画の後、『ネグレクト 真奈ちゃんはなぜ死んだか』で小学館ノンフィクション大賞を受賞した杉山春さんと、『土の中の子供』で芥川賞を受賞した中村文則さんの、トークショーもあった。目的の半分はこのトークショーだった。どちらも読んでいたし、杉山さんとは一度電話でお話したこともあった。2人の話を聞いてみたかった。『土の中の子供』は、読んだのだけれど実は内容はあまり覚えていない。ただ、施設で育った主人公が、高いところからモノを落とすのが好きだったという話は、ずっと残っていた。共感でもなく、疑問でもなく、分かるような気がする、そこには何かある気がするという感覚で。杉山さんの『ネグレクト』は、彼女のルポライターとしての誠実さ、母親としての誠実さが現れている。加害者である母親に寄り添うでもなく、悪者として制裁するでもなく、事実を丁寧に表現しようとした、すごい本だった。
 でもトークショーは、時間がなかったこともあってか、あまり深まらなくて残念ではあったが、ビンゴの言葉もいくつかあった。中村さんがスティーヴィーの無邪気さを話せば、杉山さんが自分が取材してきた母親にもその無邪気さがあると語る。もしかしたら犯罪者と言われている人の多くは、無邪気さを持っているのではないかと。それと、この作品の終わり方の話にもなった。どこで終わるかで、作品が大きく変わっただろうと。映画は、彼が10年間の服役のため刑務所に入ったところで終わり、ハッピーエンドではなかった。彼が刑務所から出た時、どうなっていくのかは分からないままだ。確かに最後、母親とハグをした。でも、杉山さんが1度目に見た時は感動的な場面として捉えたが、2度目からは疑問を持ったというように、完全に和解したとは思えない。母親は「愛している」と言っているが、彼は「ありがとう」と言うのが精一杯で、ハグ自体もどこかぎこちなかった。
 そのトークショーには、カメラマン助手をしていたという日本人女性もいて、今のスティーヴィーの状況も話してくれた。彼は今、実家から離れた刑務所に移され、母親が面会するのは物理的に難しく、軽度の知的障害?を持つ婚約者ともお互いに納得した上で婚約を破棄しているらしい。カウンセラーも相変わらず拒否し、自らの内と向き合い表出することを避けている。その状況を知れば尚更、彼が刑務所を出た後に不安が残る。レイプ被害者は今、14,5歳になっており、この映画を自分の選択で観て「この映画を作ってくれて良かった、彼がなぜ犯罪を犯したのか分かった」と感想を述べたらしい。これだけでも、映画を作った意味があったのではないかと、杉山さんがコメントしていた。そして彼は、映画を観た人との文通に楽しみを持ち、監督に大きな辞書をお願いしたようだ。日本で上映されることにも興味を持ち、感想を送ってほしいとお願いしていた。

 スティヴィーも、その家族も、映画に出るのはとても勇気のいることだっただろう。それだけでも、この映画は貴重だ。もう一度観れば、また何かに気付くかもしれない。あたしが考えたいテーマの材料が、あちらこちらに盛り込まれた内容だった。観終えてしばらくは、言葉が出なかった。気持ちは沈んでいない。彼は彼を生きている、それが伝わったからだろう。そんなにうまくはいかないことも。彼の揺れがリアルに表現されていることで、あたしは考えるパワーをもらえたのかもしれない。彼の母親は、笑うのが下手だと感じた。でも彼は、よく笑う。嘘だって誤魔化しだって笑えている。そして、人を求める。監督や婚約者、妹や祖母、そして友人、どんなにトラブルを起こしても彼を思う人たちはたくさんいて、彼もまたその人たちを求めていた。だからあたしは、絶望せずに彼を見ていられるのだろう。
 あぁ、いい映画だった。


| ユキ | 03:15 | comments (1315) | trackback (2869) | giornale(日記) |
引越につき……
ちょっと手違いがあって、ネットが15日まで使えませんm( _ _ )m
それまで携帯で見れるっちゃ見れるんだけど、一応おやすみです。
よろしくお願いします。

| ユキ | 22:14 | comments (3607) | trackback (4956) | その他::おしらせ |
千葉県民バトン
Aryla.netのあゃさんから「千葉県民バトン」が回ってきました。
あ、これってあたしが千葉県民ってばれちゃう!?
まぁ、もう引越しちゃうから良しとして、最後の思い出にやっとこうかと。


【千葉県民バトン♪】

◆千葉県のどこ住みですか?紹介も兼ねて。
 千葉市です。8年間いたことになるのかな。4年前にアパート引っ越してるけど。
 思ったより長居をした気がする。その分、思い入れも深くなったかな。

◆東京ディズニーランドの名称が気に食わない。
 あ、千葉なのに「東京」だからかぁ。別にいいんじゃないかと思うけどな。

◆ジャンケンであいこが続くと「しょっしょっしょ!」と言う。
 いや、「あいこでしょ」を言い続けるね……。
 出身が違うから許してくださぃ(;´Д`)。

◆千葉ロッテより巨人が好きだ。
 ある時から、ロッテファンになっちゃいました。
 野球は興味なかったんだけど、マリンに行ったら楽しくて!!
 千葉を離れるけど、ロッテファンはしばらく続きそ。

◆キムタクが東京出身といっている気持ちが分からなくもない。
 分からなくもなくもないかな(笑)
 千葉もいぃところだと思うょ、うん。

◆茨城県は関東地方ではなく東北地方だと思っている。
 いや、東北出身のあたしから見れば、茨城は関東です(笑)。
 っていうか、東北バカにされてる!?

◆京葉線海浜幕張駅とは対照的な総武線幕張駅の寂れ具合がちょっと悲しい。
 幕張駅をあまり使ってないから分かんない……。

◆近所にマルエツかジャスコがある。
 マルエツがあるねー。
 サティの方が近いから、愛用してるけどね。

◆春の選抜高校野球は嫌いだ。
 好きだよね~。
 なんかあの一生懸命な少年たちを見るのが(笑)。

◆高校サッカーといえば市船が頭に出てくる。
 うーん、有名だしねぇ。
 ちょっと時間かかるけど、市船かも。

◆船橋駅の待ち合わせスポットと言えばさざんかさっちゃんだ。
 前のバイト先が船橋だったけど、待ち合わせしなかったからな。
 しかもさざんかさっちゃんを知らなぃ……。

◆県外から千葉県に入る大河を渡るとき何だかほっとする。
 うんうん。仕事してた時がそうだったね。
 毎晩押し潰されながらあの川を眺めて、やっと帰ってきたなぁって。

◆田舎もんだとは決して思っていない、基本的に自分は東京人と変わらないと思っている。
 長い電車を見ると少し興奮するし、人込みに行くと頭痛が起きる田舎者デス。
 出身は東北だもーん@言い訳

◆埼玉を仮想敵国と思っている。
 なんか、千葉VS埼玉みたいなのってよく言われるよね。
 あたしはもともと客観的な立場だからかもだけど、仮想敵国なんて全然。

◆小4の社会科の教科書は「すすむ千葉県」
 えっと、小4の頃は、東北の田んぼで遊んでました。
 教育実習したけど、「すすむ千葉県」っていうのがあることすら知らない……。

◆羽田空港に向かう飛行機で県内上空を通過しているとき、成田で降ろして欲しいと思う。
 羽田も成田もたいして移動時間変わらないんじゃないかと……。
 まぁ、飛行機って何回かしか使ったことないけどね。

◆都内でのんでいると仲間と終電の時間があわない。
 うーん、みんなも神奈川だったり千葉だったりで、大体一緒だよね。
 都内で飲むって仕事やってた時が一番多かったからかなぁ。

◆千葉市が県庁所在地であることを疑問に思う。
 え、なんでだろ。
 大体県名と同じところが県庁所在地だよね??

◆旅行先でどこからか聞かれて、東京もしくは東京の方と答えてしまって自己嫌悪に陥る。
 いや、千葉って答えてたょ。
 全然通じると思うんだけどなぁ。

◆買い物はもちろんららぽーと。
 いや、千葉駅か東京まで行っちゃうかなぁ。
 最近お金なくて買い物してないね……@涙

◆あなたの素敵な千葉県民にバトンをまわして下さい
 リョーマくん、よろしく!!


| ユキ | 03:11 | comments (2074) | trackback (5382) | narrativa(物語) |
見えない場所
   どこに向かっているの?
     あそこ

   あの山?
     ううん、あの山の向こう側

   向こう側には何があるの?
     知らない
     何かあるかもしれないし、何もないかもしれない

   行って何をするの?
     着いたら考える
     今はあの山の向こう側に行くためにできることをするだけ


   何のために行くの?
     みんなにはあの山しか見えないかもしれないけど
     あたしには「山の向こう側」が見えたから

   ここに不満があるの?
     ないよ、ここは居心地がいい
     でも、だから行くんだと思う

   そんな苦労をしてまでどうして?
     あたしに見えたものを、この目で確かめたいから
     あたしを証明したいからかもしれない

                                                   イラスト byふわふわ。り

| ユキ | 19:00 | comments (0) | trackback (5062) | poesia(詩) |
透明な存在のボクだって生きている
 先日の日曜、前のバイト主催の研究集会があって行って来た。もともと合格の報告とお世話になった挨拶をしに行くつもりだったのだけれど、本の販売を手伝ってほしいと連絡があって役に立てるなら喜んでと。結局、何だかんだと手や口を出してしまったけれど。
 講演は、浅川道雄先生(元家裁調査官、NPO法人非行克服支援センター副理事長、「非行」と向き合う親たちの会副代表)だった。実は、NPO法人非行克服支援センターで講演をしてお世話になっていたので、接待をしながら久しぶりにお話をした。「今の人たちは希望が持てないもんねぇ。それが大変だよねぇ」と白髪と帽子がよく似合う浅川先生が、しわの深い笑顔で言うと、なんだかほっとする。直接というよりも、多くの人々をよろしくお願いしますと頼りたくなる。
 講演は仕事をしていてあまり聴けなかったのだけれど、酒鬼薔薇聖斗の手紙を資料として掲載し、子どもたちを「透明な存在」にしてしまう義務教育について話していた部分を聴くことができた。義務教育が、教育を受ける義務ではなく教育を受けさせる義務であること、教育を受けることは権利であることなどを説明した後、この義務教育がどれだけ子どもたちを苦しめているかを話していた。勝ち組・負け組社会、成績で差別・選別される学校、学校化していく家庭教育。非行少年少女の訴えに、低く身を置いて耳を傾けてきた彼だからこそ話せるリアルな言葉がたくさん聴け、参加者も「心が痛むわ」などと言いながら彼の著書本を買って行った。

 あたしは、薄暗い舞台裏で地べたに座り込み、コンクリートの壁に背を任せながら、宙を仰いで聴いていた。
 「透明な存在」かぁ……。あたしはどうだったのだろう。いじめに遭った時、あたしは透明な存在になろうとした。でも、いじめられっ子は透明にはなれない。いじめられっ子として存在しなければ、いじめはいじめにならないから。役割分担だ。中学に入ってから、透明な存在になろうとはしなくなった。ただ、役割分担は上手くなった気がする。教室で、生徒会で、部活で、友達関係で、恋愛で、家庭で、それぞれ期待される役割、自分がなりたい役割を演じてこなしていたんじゃないかな。もちろん、その時はそんな意識なんかなかった。でも、どこかで自分を見ている自分の存在は感じていたかもしれない。一人で泣いている時でも、ここは泣くとこだから泣いとけって見てる自分がいた。だから、自分という存在は透明だったのかもしれない。自分の本音を出せた場所は、糞尿と共にトイレん中くらいでさ。
 でも……。あたしはもう一度明るいステージを振り向いた。あたし、ここで生きてるよ。今は透明でも何でもない。いろんな人と出会って、いろんな自分と向き合って、あたしは透明ではなくなった。血なまぐさくて、どんくさくて、かっこ悪くて、いっぱい転んだりもしてるけれど、それでも生きてる。透明な存在の時もあったかもしれないけれど、あたしはいなかったんじゃなくて、透明なあたしを生きていたんだとそう今は思う。「透明な存在」は、存在していないんじゃなくて存在してるんだ。そして存在し続ければいつか自分を生きられると思えるような、希望なんてキレイなものじゃなくても、ナニカを「透明な存在」を生きる彼らに見せられたらいいのになと思った。そう思えるまで、透明だって泥だらけだって存在し続ければそれで充分だよ、いいんだよってさ。ただ、「透明な存在」って寂しいんだ。本当の自分を見てほしい、愛してほしいと願いながら、本当の自分を出せない。
 ずっと特別な存在になりたかった。特別な存在にならなきゃ、自分を証明できないんじゃないかと思ってたから。でも今のあたしに明るいステージは眩しすぎて、ステージ裏に座り込むのが丁度いい。そんなあたしがあたしである証明なんだって、少しずつ気付けたからかもしれない。そして寂しさも、それらと手をつないで歩くことを少しずつ覚えてきたのかもしれない。
 「透明な存在」に色を付けるため、色を付けてくれるはずの他者を殺すことしか浮かばなかった彼。そして、「透明な存在」に共感した多くの若者たち。そんな彼らに見せられる希望はないかもしれない。けれど、だからといってこの世界が絶望に満ちているわけではない。それを、ほんの少しでも伝えられたら。あたしも生きてきたよって伝えられたら。そんな風に思った。

 その後、バイトでお世話になったみなさんと飲みに行って、いろんなことを話しながら終電近くまで飲んだ。やっぱ生きてるとおもしろいこといっぱいある。人と会って、笑って、話して、飲んで、胴上げされて(笑)。仕事からつながったこの世界で、様々な人と出会えた。これからもこの世界から足を洗う気はなく、引越し先の人にも早速連絡を取った。引越し準備はなかなか進まないくせに、そういうことだけはできるんだよね。一週間後には引っ越す。また新しい色を手に入れながら、寂しさも抱えて、あたしを歩こう。


| ユキ | 01:13 | comments (2557) | trackback (3667) | narrativa(物語) |